2007年12月12日

第36章 感想と気になる点

第36章をすでに読み終えられた方は「続きを読む」をクリックしてください。

ついに物語に決着がつきました。これまでお付き合いくださったみなさん、どうもありがとうございます。

結末はとても感動的だったと思います。ハリーは結果的にはヴォルデモートを殺したことになりましたが、期待していた通り、アバダケダブラの呪文は使わず、ハリーのトレードマークのエクスペリアーマスの呪文でヴォルデモートを倒しました。が、それだけでなく、最後のチャンスとして、ヴォルデモートに自分の犯した罪を悔い改める機会を与えたのはとても気高いことで、他人の過ちを許し、常にセカンドチャンスを与えてきた寛大なダンブルドアの愛弟子らしいと思います。第6章で、ホークラックスを作った本人が自分自身を再び1つに戻す唯一の方法が"remorse"(後悔の念)であるとハーマイオニーが言っていましたが、これと関係があるのかもしれません。

最初に読んだときには結末に感動したものですが、もう1度読み返してみると、あちこちに疑問がたくさんわいてきて、単純に「あー、とってもよかった」と感動できない気分です。実はそのために、この章のアップが遅れていたのですが、これ以上延期したくないので、まだまとまらないままですが、わたしの気になる点にお付き合いいただければありがたく存じます。

さて、この章の冒頭で、ヴォルデモートも同時に気を失っていたことがわかります。なぜヴォルデモートはハリー同様意識を失っていたのでしょう?これまでホークラックスが破壊されてもヴォルデモートは気がつかなかったので、一種のホークラックスであったハリーの中にあったヴォルデモートの魂の一部が破壊されたことによって本体の魂に影響があったとは思えません。また、ヴォルデモートは杖を持たないハリーに向かって死の呪文を放ったので、ヴォルデモートがハリー同様死にかけた、臨死体験をしたとは考えられないのです(次に述べるように、これもニワトコの杖とハリーとの不思議なつながりによって、死の呪文がヴォルデモートに跳ね返って死んだとすれば話は別ですが)。だとしたら、なぜヴォルデモートはハリーと同時に気を失っていたのでしょうか?(ローリングさんの公式サイトでは、この点がはっきりされているようですが、まだわたしは読んでいません。読むとまたこの章のアップが遅れそうな気がしたので。)

ヴォルデモートがハリーと同時に気を失っていたという事実から、35章に出てきた生き物がヴォルデモート自身の魂であるという説が出てきているようですし、まめさんの35章へのコメントからすると作者もそのように意図しているようですが、ハリーの"party"であるはずのハリーの頭の中にそれが一緒に出てくるというのはわたしとしてはやはり納得がいかないし、不満です。

しかし、この生き物がヴォルデモートの本体の魂なのではないかと思わせる表現がもう1つ36章にあります。それは、ハリーが最後のチャンスだと言って、後悔せよと勧めるところで、"I've seen what you'll be otherwise"(504ページ14行目)「そうでないとどんなことになるか、僕は見たんだ」と言っていることです。"what you'll be otherwise"というのは、この生き物を指すのではないでしょうか。

次の疑問点は再びニワトコの杖です。掲示板でRootさんもおっしゃっているように、この章で、最後の持ち主である自分が戦いで敗れないまま死ぬことによって、杖の力が自分と共に絶えることをダンブルドアは計画していたとハリーが言っています。が、一方、35章では、"you (ダンブルドア)meant him (スネイプ)to end up with the Elder wand"とハリーが言っていて、それをダンブルドアが肯定しています。これは杖が最終的にスネイプの手に渡ることをダンブルドアは意図していたいう意味だとわたしは思います。ややこしいのは、杖の所有について、物理的な所有(つまり、杖という物そのものを手にすること)と、杖が精神的に主人として魔法使いに仕えるという意味においての所有権の2つがあることではないでしょうか。35章でハリーが言っていたのは、英語表現からして、スネイプが物理的に杖の最終的な所有者になることを指していたのではないかとわたしは思います。つまり、ダンブルドアが死んだ後、ニワトコの杖を手に入れ、それを保管するという意味での所有者としてです。が、精神的には、杖はダンブルドアを主人として認識していたわけで、36章でハリーがダンブルドアの計画についていっているのは、こちらの精神的な意味を指しているのではないでしょうか。

禁じられた森の中、ヴォルデモートはハリーが死んでいると思って、ハリーに向かってクリシエータスの呪文を放ちますが、ハリーは痛みを感じません。大広間でヴォルデモートが人々を黙らせる魔法を放ったときもすぐに解けてしまい、ネビルに魔法を放ったときも、実際にネビルには危害は及ばず、すぐに魔法が解けてしまいました。これらの例について、母親が自分に対してしたのと同じ自己犠牲の力がホグワーツ軍の人々に対して働いているためとハリーは説明しています。34章の最後で、実際にニワトコの杖を使って死の呪文でハリーを殺しているのですから(ヴォルデモートの中に流れるリリーの血のおかげでハリーは生き返りましたが)、杖はハリーが自らの命を持って救おうとした人たちに対しては効力を発揮しないというハリーの説は正しいように思えます。

それに対して、直しようがないと言われていたハリーの杖を直すことができたというのは、ニワトコの杖がハリーの言うとおり、ハリーを主人として認識したということなのでしょうか?もっとも、この時点では、すでにハリーはヴォルデモートの手から武装解除の呪文で杖を落とし、それを自分でつかんで、ニワトコの杖を物理的に自分のものにしており、そのためにハリーが杖の主人となったという説明もつくのかもしれません。ニワトコの杖の前の主人であるドラコからドラコの杖を奪ったからハリーが新しい主人であると言うハリーの説はちょっと説得力に欠けていると思います。もしこれが通用していたら、これまでの歴史の中で、杖の精神的な所有権はどんどんと傍系に流れていってしまっていて、今頃は誰が正当な所有者か全くわからなくなっていたでしょう。わたしとしては、このハリーの説には納得しかねます。ハリーがヴォルデモートとの決闘で言ったことには、真実だけではなくて、はったりというのもかなり混じっていたのではないでしょうか。

ニワトコの杖の精神的な所有権ですが、前の所有者を殺すとその所有権が移るというのはやはり伝説なのではないかと思います。実際に、グリンデルバルトは死にませんでしたが、杖の継承権はダンブルドアに移っています。が、殺さなくても杖を奪うと、奪われた杖が新しい所有者にその忠誠を移すというのは、オリバンダーも認めているので、本当なのではないでしょうか。

ところで、ハリーが"I'm putting the Elder Wand ... back where it came from"(600ページ4行目)と言っていますが、この"where it came from"(元の場所)はダンブルドアの墓とわたしは解釈したのですが、みなさんはどう思われますか?

ヴォルデモートが人間の肉体を持ってからはあまりにも人間的になってしまったというご意見がずっと前の章でありましたが、この章でもそれを痛感させられます。ホグワーツ軍に嘘をついて、ハリーは自分の命が惜しくなって逃げ出したと言っているところは、本当に情けなく思いました。相手を高く評価する敵こそ、器の大きさを感じ、敵としての偉大さを感じさせるものですが、悪役にはもっと威厳を保ってほしかったと残念に思います。

グリフィンドールの剣を最後に持っていたのは、ゴブリンのグリップフックでしたが、いったいどういう経緯で組分け帽子の中から出現したのでしょう?勇気のあるグリフィンドール生(ネビル)が真に必要としたときに助けとして現れるというグリフィンドールの剣の出現条件に当たったからではないかと思います。

戦いの場面で、ハグリッドの言葉に触発されたケンタウルスに加えて、セストラルやヒポグリフに巨人までが戦争に加わり、すべての種族の協力と調和というテーマが見られました。特に、クリーチャーに率いられたしもべ妖精たちまで戦いに参加したこと、ハリーをしもべ妖精の擁護者とクリーチャーが言っているのが、感動的でした。

また、スラッグホーンがヴォルデモートと戦っているのにも、スラッグホーンを見直しました。30章で、スリザリン生と一緒に城を去りたいのなら止めないとマクゴナゴルに言われたスラッグホーンでしたが、やはりホグワーツを愛し、正義を尊んで、敢然とヴォルデモートに立ち向かったのですね。6巻の最初では、事なかれ主義を決め込んでいたのを知っていただけに、この勇気には感心しました。

ネビルも大活躍でしたが、この章での驚きはモリーでした。いつもは表に出ず、善き母に徹し、家族の心配をしているモリーでしたが、ベラトリックスを決闘で殺すとは。やっぱり母は強しです。

さて、この章のタイトル"The Flaw in the Plan"(計画の誤り)は、何を指すのでしょう?この章で、唯一"plan"という言葉が使われているのは、ダンブルドアの計画についての部分だと思います。つまり、ダンブルドアはスネイプとともに自分の死を計画し、それがすべて計画通りいけば、ダンブルドアとともに杖の力も死に絶えるはずであったというところです。タイトルはこれが計画どおりに行かなかったことを指すのでしょうか?

さて、ここまで来られたみなさんならご存知でしょうが、あとは補足の章を残すだけとなりました。もう少しです。最後までよろしくお付き合いください。
posted by みちえ at 02:36| Comment(6) | TrackBack(0) | 気になる英語表現 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
スネイプとニワトコの杖についての意図はまだいろいろ考えてみたいと思いますが、杖の所有権についてはいろいろ気になることがあります。

ドラコは自分が意識して「ニワトコの杖」の所有者になったわけではなかったのでしょうが、ダンブルドアは死を覚悟してドラコに杖を奪わせたと思います。ドラコに完全に屈服したという意識があったと思います。そういう「完全敗北」として、自身の生命を相手に委ねる気持ち、意識のようなものを杖が感じ取ったとき、杖の所有権は移るのではないか、と思いました。
ドラコがハリーに杖を取り上げられたときはこのような意識が弱いように感じられます。しかし、ドラコのサンザシの杖の所有権は実際にハリーに移っていましたよね(オリバンダーが鑑定していました)。
最初に考えたよりも、結構簡単に杖の所有権は移ってしまうように思えてきました。

となると、6巻のダンブルドアを武装解除した場面でニワトコの杖の所有権もドラコが手に入れてもおかしくはないのかもしれないし、同様にそれがハリーに移っていてもおかしくはなく、ニワトコの杖はその実体がないけれども所有権は移っているということになりますよね。

しかし、この所有権についてはみちえさん同様疑問も感じます。
ニワトコの杖だけでなく、杖一般も同様に「所有者」を杖が選ぶということになるので、みちえさんのご意見の通り、一般的な杖でも「誰が正当な所有者かわからない」ということにが多々おきてしまうように感じます。
この「所有権」については所有者自身が杖を実際に使わないとわからないようですし。
ある戦闘で負けた魔法使いは自身の杖が自分のものではない感覚になってしまうのでしょうか。

わたしもニワトコの杖はダンブルドアの墓に戻したと思います。これで杖の石も本当に「伝説」になってしまったのだと感じました。
Posted by kmy at 2007年12月13日 14:56
はじめまして。
9月に読み終わり、様々な疑問が頭のなかに渦巻いていましたが、みちえさんの名訳で色々と解決しました。ありがとうございました。
それでも魔法使いの杖には、疑問が残るのですが、私の解釈は、杖自身が生き物のように人を選ぶあるいは行動するのではないかというものです。最初の方の章で、ハリーが移動中、ヴォルデモートに襲われましたが、杖が勝手に動いて襲撃をかわしています。またその力は有名な杖ほど強いのではないでしょうか。
また、ニワトコの杖の所有権を持つには、必ずしも前の所有者を殺す必要がないことをダンブルドアは知っていたのではないでしょうか?グリンデルヴァルトは杖職人から盗んだだけですし、ダンブルドアは彼と戦って杖を得たけれど、グリンデルヴァルドを殺してはいません。
(武装解除でも何でも、その所有者の意に反して奪えばよいのでは?)ただしヴォルデモートは、言い伝えどおり、前の所有者を殺さなくてはいけないと思っている様です。
それでダンブルドアは、弟6巻でマルフォイが自分を殺す計画を立てているのを知り、もしマルフォイが自分を殺したら、杖の主がマルフォイに移り、最終的にはヴォルデモートが彼を殺すことになると推察します。
それでいざという時は、事情を知っているスネイプに所有権が移すことを望んだのでは。(結果的には、一時所有権はマルフォイのものになってしまいましたが、ヴォルデモートは気づきませんでした。)
そしてニワトコの杖は、その所有権をもつ人間と正面から対決するときは、その人に優先権を与えてしまうのではないでしょうか?
勝手な解釈ですみません。
Posted by くまのり at 2007年12月13日 22:00
終わりました。。
ちょこちょこハリーが「許されざる呪文」を使うシーンが見られたので、ヴォルデモートを倒すのはアバダケタブラかも知れないと心配していましたが、いつもの呪文で安心しました。

最後の戦いには組み分け帽子も含めケンタウルスや巨人、セストラル、ヒッポグリフ、屋敷しもべと勢ぞろいだったのに対して、フォークスがちらりとも出てこなかったのがちょっと意外でした。
Posted by revolu at 2007年12月14日 00:20
kmyさん、くまのりさん、杖の所有権についての考察をどうもありがとうございました。杖自身が所有者を選ぶということが理解する上で重要な鍵になるわけですね。
ドラコがニワトコの杖の主になったのは理解できても、やっぱり論理に飛躍があると思うのは、そのドラコから「サンザシの杖」を奪ったハリーにニワトコの杖の所有権が移るという点です。いくら、ニワトコの杖がドラコを主人として認識していたとしても、その主人から別の杖を奪った人にニワトコの杖の所有権が移ってしまったら、ニワトコの杖の所有権は杖自体のあり場所とはまったくかけ離れてしまって、今頃とっくに所有権は誰だかわからない人に移ってしまっているのではないかとわたしは思います。もっとも、ドラコのようにそれが何であるかを気づかずに、ニワトコの杖を奪った人というのはこれまでにはなかったかもしれませんね。ニワトコの杖を持ったら、たぶんそれを誇って、その力を試していたに違いありません。前の持ち主がダンブルドアだったからこそ、次の持ち主がそれと知らずにニワトコの杖の持ち主になってしまったということがありえたのでしょう。

revoluさん、最後までお付き合いどうもありがとうございました。おっしゃるとおり、ハリーと「許されざる呪文」との関係はちょっと心配でした。revoluさんのコメントで気がつきましたが、フォークスは本当にどうしたのでしょうね。最後に登場してもよさそうだったのに。特に、組分け帽子にグリフィンドールの剣ときたら、当然フォークスも助けに来てよさそうでした。
Posted by みちえ at 2007年12月14日 02:35
フォークスはダンブルドアという偉大な存在の消失を表現するために作者が選んだ象徴なのだそうです。それゆえに7巻では登場させなかったのですね。私はスネイプがナギニに噛まれた時にフォークスが来ないかと期待してしまいました。バジリスクの毒が治癒できるくらいですからナギニの噛み傷くらいは余裕で治癒できるんじゃないか?って思ってました。

キングスクロスにいた生物がヴォルデモート本体の魂という前提の元に読んでみました。それを窺わせる表現を(みちえさんがご指摘された他に)私が見つけたのは567P「...has it gone?」と578P「you have less to fear from returning here than he does.」の後でハリーが生物を見ている場面です。
私は同578Pでダンブルドアがハリーに「死者を哀れむな、生きているもの、とりわけ愛なしに生きる者を哀れむな。」という言葉で悩んでいたのですが、これは「ヴォルデモートに殺された人々を哀れむな」→哀れむ事によってハリーの心にヴォルデモートに対する復讐心が生まれるから。「ヴォルデモートを含む現世で生きている者達を哀れんで救済してやりなさい」という解釈をしてみました。どう思われますか?
また、なぜヴォルデモートの魂がハリーに着いて来てしまったかについてはハリーとヴォルデモートの魂は長年密接であったからではないでしょうか?ハリーがヴォルデモートの意識に度々潜るようになってからはより絆が強まったのだと思います。そして、この場所はハリーの頭の中で想像したヴィジョンとして映っていますが、実際は2つの魂はあの世とこの世の間にいたのだと思います。

杖については、スネイプとのことについては掲示板に書き込みさせてください。
私は一般の杖は、(みちえさんの表現をお借りします。)精神的にも物理的にも奪われた場合は所有が移り、ニワトコの杖については精神的に奪われたという認識があれば所有が移るのではないかと考えました。みちえさんが仰られたようにこれまではニワトコの杖と気付かないで所有が移るというややこしい事態にはならなかったのだと思います。
また、ハリーが自然死であったならニワトコの杖の力が失われるとあるのでやはり伝説の様に前所有者を殺した場合でも打ち負かしたという事になり所有が移る条件になると思いました。

"The Flaw in the Plan"というのは私もダンブルドアの計画通りニワトコの杖のパワーが消失しなかった事だと思います。
Posted by Root at 2007年12月14日 16:57
ヴォルデモートの魂がハリーと一緒にキングスクロスに来たことについてはRootさんのご意見と同じで二つの絆が強かったことがあると思います。(特にリリーの血がヴォルに入ったことが影響大かも)
それとスネイプの記憶の中で「ヴォルデモート自身がハリーを殺さなければならない」と言っていましたね。あの時「なぜ他の者では駄目でヴォル自身しかいけないの?」と思いましたがこのことを指していたのかもと思い当たります。ハリーの中のヴォルの魂を破壊するだけなら誰がハリーを殺してもいいわけで・・・ヴォル自身がすることによってヴォルの魂もハリーと同じ状態になることをダンブルドアはあの時点で知っていたのかと思うと・・・恐ろしいくらいです。そしてその生死はハリーが握ることになるのですから。森に戻ろうと思わなければ二人とも死んでるんですもんね。ナギニの魂だけ残して。

キングスクロスはハリーの頭の中のことだとダンブルドアは言っていましたがハリーの意識の中にダンブルドアが入って実際の臨死状態を表したものだと思います。

Posted by まめ at 2007年12月18日 20:43
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