ついにタイトルのDeathly Hallowsが明らかになりました。邦題にしたがって、この章からDeathly Hallowsは死の秘宝とすることにします。仮題の『死の聖人』がその後『死の秘宝』になったわけが理解できます。Hallowは、英和辞典を見ると聖人となっていますが、英語では人とも物ともとれるたいへんあいまいな言葉のようです。この章で初めて、Deathly Hallowsは物であることがわかりました。
3兄弟の話はとてもおもしろかったので、長くなりましたが、できるだけ原文に忠実に多めに「章別あらすじ」の中で抽出したつもりです。この話は死についてが寓話的に語られていますが、三男が最後に死を受け入れ、死神と一緒に仲良くこの世を旅立って行ったというくだりが特に興味深く感じられました。兄たちは死に勝とうと対抗し、結局死神の手に落ちたのと対照的だと思います。兄たちの死に対する態度とホークラックスを6つも作って死を打ち負かそうとしたヴォルデモートの態度はとてもよく似ているような気がします。死というのはシリーズを通してのテーマの1つなので、この物語はなにか象徴的な意味を持つのではないでしょうか。
この物語の中で、長男が"fellow wizard"を探して出して、けんかをしたとありますが、これは魔法使いがまだマグルと共存をしていた頃で、1689年の法律調印前ではないかと思われます。また、死から呼び戻された娘と次男とはベールで隔てられていたというくだりは、シリウスがベールの向こうに消えたというのを思い出させます。ベールというのは死の象徴なのかもしれません。
ハリーのInvisibility Cloakが、秘宝の1つであるイグノタス・ペベレルの透明マントなのかどうかというのも気になります。また、死の秘宝のうちどれを選ぶかというので、3人の意見がまったく異なるのも興味深かったです。復活の石を選んだハリーには痛々しい気持ちを感じます。あまりにも多くの大切な人、特に両親を死によって失ったハリーの死者を慕う心がよく表れていると思います。
この章でとても好きなところは、ルナの部屋について書かれた部分です。ハリーでなくても、ここを読むとルナがとてもいとおしく思えてきます。後で「気になる英語表現」でこの部分を訳してみたいと思っています。